Le Cordon Bleu ロゴ

日本の自然が育んだ上質な食材、飛騨牛

第11回 The Mystery of Japanese Ingredients

ル・コルドン・ブルー東京校 料理講座 シェフ講師 ジル・カンパニー

ル・コルドン・ブルー東京校 料理講座 シェフ講師 ジル・カンパニー

素材の持ち味を余すことなく届けたい

飛騨牛

「日本は新鮮な食材が豊富ですね。また、日本料理の繊細な味つけやビジュアルセンスにも、とても刺激を受けています」

そう楽しそうに話す、3カ月前に来日したばかりのシェフ。テーマに選んだのは、日本でほれ込んだいう飛騨牛。清らかな水と澄んだ空気に恵まれた、飛騨地方の大自然でのびのび育ったブランド和牛だ。きめ細かでとろけるようにやわらかい肉質、そして芳醇な味わいを誇る。

「飛騨牛は比類なくノーブルな牛肉の最高峰だと思います。レシピを考えるうえで何より優先したのは、その素晴らしい風味を余さず生かし切ることです」

そこで、シェフが今回創作することにしたのはラビオリ。

「香りも肉汁も、すべて閉じ込めて口の中まで届けたいと思いました。」



手間を惜しまぬ仕事を

「見てください!このきれいな網目状の脂を」

シェフが笑顔で取り出したのは、この日のために取り寄せたフィレ肉の塊。

「包丁で細かく切って詰め物を作りますよ。機械でミンチにすると脂をつぶしたり、余計な熱が加わったりして肉にダメージを与えてしまいます。上質な食材を最もいい状態で食べてもらうためには、手間を惜しんでいられません」

肉そのものの味を邪魔しないよう、つなぎは加えず、味付けは塩とコショウでシンプルに。生地は卵を使わずに、牛脂を混ぜて弾力をつけた。

「ラビオリのゆで時間は、詰め物のまわりに軽く火が通る1分30秒ほど。肉のジューシー感を味わえるように中はレアに仕上げます」

数種のキノコとマデラ酒で風味づけした鶏コンソメのソースには、隠し味に醤油を少々。味が引き締まり、美しい琥珀色が演出された。器にもこだわって、有田焼の新作を用意。ラビオリを盛り、まるで絵を描くように、色とりどりの小さな野菜とトリュフで彩った。小指の爪ほどのトマトを湯むきするなど、飾り付けにもシェフの細かな仕事が光る。

「日本料理で重んじられる白・黒・赤・黄・緑の5色の配色を意識しました。私から日本へのオマージュです」

飛騨牛



バランスの妙が生むハーモニー

飛騨牛

完成したのは、花のように可憐な一皿。フレンチ×和の融合がモダンな印象も醸し出し、うっとり見とれてしまうほど。

「料理は五感で味わう芸術。料理に携わる者はアーティストでなければ。味も香りも色も、どうバランスをとって表現するかが肝心ですから」

ラビオリをひとつほおばると、肉汁の甘みがジュワッと溶け出し、飛騨牛のまろやかな旨みが口いっぱいに広がった。キノコの香りとさっぱりしたコンソメの風味がさりげなく肉のコクを引き立て、深い余韻を残す。極上のハーモニーを奏でる、主役と脇役の絶妙な配分に感嘆する。

「35年料理の世界にいますが、飛騨牛のような優れた食材との出合いには胸が躍りますね。 これからも、フレンチのアプローチで日本の食材の新しい魅力を引き出すことに挑戦していきたいです」

コラム一覧はこちら

東京校トップへ

神戸校トップへ

フィルタ

インタビュー:東京校卒業生 中野 賢太

インタビュー:東京校卒業生 中野 賢太

大学在学時、料理人の道を模索していた中野さんは「料理をやるにもお菓子の知識は必要」とル・コルドン・ブルーの菓子講座を受講。習ったのは、「ガトー・モカ」や「モンモランシー」などクラシックなフランス菓子の数々でした。

フランス人の郷愁を誘う香ばしさ—— きな粉

フランス人の郷愁を誘う香ばしさ—— きな粉

豆腐や豆乳、味噌そして「きな粉」も、もともとは大豆。大豆を煎って粉末状にしたのが「きな粉」。たんぱく質や植物繊維を豊富に含むことから、注目を集めているヘルシーな食材のひとつ。その「きな粉」にシェフが初めて出合ったのは、7年前のことだ。

ジャパニーズスイーツの要、餡

ジャパニーズスイーツの要、餡

「12年ぐらい前でしょうか。まだ日本に住む前、旅行で訪れた際に初めて"餡"を口にして、非常に驚きました。フランスでは豆を砂糖で甘く煮るということはまずしませんから。食感も不思議でした」

これぞジャパニーズハーブ、しそという食材。

これぞジャパニーズハーブ、しそという食材。

「私が“しそ”と出合ったのは、もちろん日本に来てからです。フランスにはない食材ですから」 2000年に来日し、日本での生活も15年目を迎えたドミニクシェフ。しそとは日本食を通じて出合ったという。 「珍しくもあり、初めて味わった時からとても好感の持てる香りでした。」

種類豊富で、様々な料理に応用できる味噌

種類豊富で、様々な料理に応用できる味噌

「私が初めて味噌と出合ったのは来日してすぐ。そう、味噌汁です。何の違和感もなく、好きになりました。ステファン・レナシェフがこの食材と出合ったのは7年前。「日本人なら誰もが親しむ味ですから、これから日本で料理をしていくなら、味噌を使わない手はないだろう、すぐにそう思いました」」

四季を感じる食材で、ニッポンを体感

四季を感じる食材で、ニッポンを体感

2006年に来日して以来、まもなく10年が経つパトリック・ルメルシェフ。日本の文化も食材も大好きだというシェフが日本を感じる食材として、今回選んだのは“桜”。日本でも、とてもシーズナルな食材である。

190  - 198 からのニュース/イベント 200
TOP