インタビュー: パリ校卒業生 市田裕司
軽井沢の豊かな緑の中に佇む、開放感あふれる瀟洒な建物。店内に入れば、ショーケースには宝石のように美しいケーキや総菜、パンが並び、訪れる人の歓声を誘います。
駅から歩くこと数分。静かな住宅街を抜ける緑豊かな小径からほど近い場所に『plat』があります。古くからある小さな商店街に溶け込むように、すっきりとした佇まいの店舗は、とてもおしゃれでスタイリッシュ。店先の壁にしつらえられたディスプレイラックには、焼き上がったクロワッサンが綺麗に並び、店内のインテリアと相まって、まるでアート作品のよう。大きなガラス越しに見えるキッチンは、器具類が整然と並ぶ清潔で美しい空間。ふだんは会社員としての仕事をしながら、週末限定でオープンするクロワッサンショップを運営するのは須藤慧さん。土日限定という営業ながら、地元の常連さんも多く、遠くから足を運んでくださる熱心なファンの方々も。最近では大型商業施設への出店オファーもあり驚いているとのこと。そんな彼女の転身物語は…
実はこの『plat』、建築家の上林剛典さんが代表を務める建築事務所が母体になっています。建築家として、作品ができあがった後どういった使われ方をしてどんなふうに変化していくのかをみてみたいと考えていた上林さんと、長年お店を持ちたいと思っていた須藤さん、新事務所設立に際しお互いの意見が一致したことで生まれたのがこの空間です。「飲食店やギャラリーのように、外に開かれた空間であれば、その先を見ることができるじゃないですか。そこで、わたしの長年の夢であった『お店』を持とうかと…」と笑顔で話す須藤さん。
高校時代は進学に際し、大学か専門学校か大いに悩まれたそうです。大学を卒業し、会社員生活が3年になる頃、長年の夢の実現に向けて、フレキシブルに働ける職場へと転職されます。そして、念願であったル・コルドン・ブルーに入学されました。パンを選ばれた理由をお聞きすると「パンは、生活にとても身近な食べ物だから」だそう。また、それだけに奥が深い、とも。
お店をオープンしたばかりの頃は、わざわざ買いに来る人なんているのだろうか?と不安だったそうですが、それは杞憂に終ります。もともとお米屋さんだったというこの空間、昔の面影を残すように作られた店頭のカウンターは、昔を知る年配のお客様には馴染みが深いようで、声をかけられることもしばしば。かつては行き交う人でごった返すほどにぎわっていたという古い商店街。新参者のクロワッサン専門店は地元でも十二分に認知されている様子です。
須藤さんに今後の夢は?と尋ねると、「『plat』というブランドはもっと知名度を上げ、事業を拡大していきたいと考えているのですが、この場所はあまり商業的にせず、さまざまな実験ができるラボ的な要素を大切にして続けていきたいと思っています」とのこと。これからどんなふうに変化していくのか、建築家ならずとも「その先」が楽しみです。
Q. ル・コルドン・ブルーを選んでよかったことは?
基本から応用まで幅広く、技術と知識の両方を身に着けることができました。一流シェフの製パン技術を目の前で見て学ぶことができたこと、毎回フィードバックをしてもらえたことは本当に貴重な経験でした。授業は休む暇もなく作業の連続ですが、同じ志を持つクラスメイトから受ける刺激も多く、とても充実した時間でした。
Q. ル・コルドン・ブルーでの経験が今の仕事にどう活かされていますか?
お店を始めるに当たってはメニューの開発が必要ですが、製パンに関する技術はもちろんのこと、最終試験でオリジナルレシピを考えた経験がとても役に立ちました。また、フランスの伝統的な製法を基礎からしっかりと学んだということが、修行経験なしでお店をやっていくうえで、強い自信にもなっています。
Q. これからル・コルドン・ブルーで学ぼうと思っている人へメッセージをお願いします
ル・コルドン・ブルーで過ごした時間、得た技術と知識、それから出会った人たちとの縁は、今の私にとってかけがえのないものになっています。ル・コルドン・ブルーに通ったからこそ、今こうして自分の長年の夢をかなえることができています。何かやりたいことがある人や本格的に勉強したい人にとっては間違いのない学校だと思います。
2019/12/17
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