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軽やかなハーモニー
を生む日本伝統の
調味料、米酢

第10回 The Mystery of Japanese Ingredients

ル・コルドン・ブルー東京校 エグゼクティブ・シェフ ギヨム・シエグレィ

ル・コルドン・ブルー東京校 エグゼクティブ・シェフ ギヨム・シエグレ

先入観にとらわれない料理を

「日本の酢は懐の深い調味料ですね。軽やかで上品な酸味はさまざまな食材とマッチして、旨みをふくらませてくれます」

瓶を前に楽しそうに話すシェフ。日本の酢をテーマに決めて以来、研究を重ねたという。

「料理のファーストステップは素材の特性を理解すること。その持ち味を生かした“遊び”のある料理で驚きや発見をつくるのが私のモットーです」

米酢

人類がつくった最古の調味料だといわれる酢はその種類も豊富。稲作文化が育まれた日本には米酢、古くからブドウの産地であるフランスにはワインビネガーというように、それぞれの地域に風土や文化に根ざした伝統的な酢がある。それだけに、日本料理の枠を超え、日本の酢がフランス料理で使われることはまだ珍しい。

「だからこそ、そうした固定観念を取り払う楽しい一皿をつくりたいと思いました」

遊び心が光る、独創的な一皿に

米酢に合わせる食材としてシェフが選んだのは、フランスでも秋にシーズンを迎える牡蠣。 「ワインビネガーとエシャロットを混ぜたソースをかけるのが、フランス流の牡蠣の食べ方。慣れ親しんだスタイルを日本の酢でアレンジしましょう」

ソースには、米酢とエシャロットのほか、生姜やカレー粉などのスパイスを加えてパンチをプラス。酸味をやわらげるため火にかけた後、「仕上げに」と言って、*1粕酢を取り出した。「粕酢には、料理全体をやさしく包んでくれるようなコクがあります。最後に加え、風味を立たせました」 そして、ここからがシェフの真骨頂。

「料理は味、見た目、食感、香り、すべてで楽しめるものでなければね」

牡蠣の下に敷いたのは、塩がついたままの紫色のワカメ。牡蠣にソースをかけ、リンゴジュースと米酢を混ぜてアガーで固めた寒天状の粒、そして細く切ったリンゴをトッピング。さらに、すりおろしたみかんの皮をひと振り。薄緑色のパールをまとった牡蠣が海藻のベッドに横たわる、秋の海のような情景が皿の上に描き出された。

*1主に寿司に使われる酒粕を熟成させたお酢

米酢
青リンゴの皮で色づけした、リンゴジュースと米酢の寒天状の粒



自由な発想で可能性を広げたい

米酢

遊び心を散りばめ、美しく彩られた牡蠣。一粒口に入れると、みかんのさわやかな香りがフワリ。そして、酸味が突出しない、まろやかな味わいが広がる。

「牡蠣には酸味を中和する性質があるんです。味が丸くまとまるので、リンゴやみかんの風味も生きてくるでしょう」

プリプリの牡蠣にリンゴのシャキシャキとした食感。寒天の粒がプチッとはじけて流れ出す、リンゴ酢の甘酸っぱさ。アクセントはミカンの皮のほのかな苦み。多彩な味と食感が米酢を介して見事に融合し、自然と笑顔になってしまう。

「先入観を持たずに、自由な発想で食材と向き合うことから新しいアイデアが生まれます。日本の酢はクセがなく、とても使いやすい調味料。今後も季節ごとの食材とマッチングさせ、魅力を伝えていきたいですね」

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フィルタ

インタビュー:東京校卒業生 中野 賢太

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フランス人の郷愁を誘う香ばしさ—— きな粉

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