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食べる喜びを広げる、可能性に満ちた米粉

第9回 The Mystery of Japanese Ingredients

パン講座 テクニカル・ディレクター ステファン・レナ

ル・コルドン・ブルー 東京校 パン講座 テクニカル・ディレクター ステファン・レナ

“米粉100%”のパンで子どもに笑顔を

Taste Festival

「米粉は素晴らしい可能性をもつ食材。今回はずっと関心があった小麦アレルギーの人でも食べられるパンを紹介します」

食料自給率アップの救世主として注目されるようになった米粉。小麦粉よりもアミノ酸のバランスに優れ、低カロリー。近年のヘルシー志向のトレンドにもフィットし、米粉を使ったパンは日本で一般的に定着した感がある。しかし、そのほとんどは米粉と小麦粉を混ぜてつくったものだ。

「小麦粉を混ぜれば、食べ慣れたパンに近い味と食感に仕上げることができます。けれど、今回私が目指したかったのは小麦制限で悲しい思いをしている子どもに“笑顔を届けるパン”。ですから、“米粉100%”にこだわりました」

幸福な食の思い出をちりばめて

米粉だけを使った生地はなめらかなクリーム状で、成形できないほど柔らかい。つなぎの役割をするグルテンを含まないからだ。そこで、生地を型に流し入れ、パウンドケーキのような形状に焼き上げることに。

「フランスではデコレーションを施したパンが流行中。今回はフランス流に、飾り付けもしてみました。お米からイマジネーションをもらってね」とニッコリ。描いたのは幼少の頃から今に至るシェフとお米のストーリー。一つ目のパンにお米を牛乳で煮た「リ・オ・レ」を飾り付けると、次にはお米のパフとチョコレート、続いて抹茶を混ぜたパンの上には甘納豆をあしらった。

「リ・オ・レは多くのフランス人が初めてお米と出合うデザート。台所でリ・オ・レを作ってくれるおばあちゃんを手伝ったのを懐かしく思い出します。もう少し大きくなると、お米のパフを混ぜたチョコレート。よくおやつに食べていました。抹茶や甘納豆は日本で大好きになった味覚です」

米粉パンを通じて幸せな食の記憶をつなげていきたい、そんなシェフの思いが形になった。

食べる喜びを広げる、可能性に満ちた米粉
懐かしいリ・オ・レを飾った

食べる喜びを広げる、可能性に満ちた米粉



10年後を見据えて

どこかノスタルジーを感じさせる、シェフの愛情が詰まったパン。素朴で可愛いらしい焼き菓子のようなたたずまいに、歓声をあげる子供たちの姿が目に浮かぶよう。一口ほおばるとお米のやさしい甘味がふんわり広がり、しっとりモチモチとした食感に思わず頬がゆるむ。しかし、この食感、フランス人には違和感があるらしい。

「フランス人はパリッとした軽いパンを好みます。フランスパンの歴史は古いですから、すぐに切り替えることは難しい。フランスで米粉100%のパンが家庭の食卓に並ぶようになるには、あと10年はかかるでしょう」

まずは米粉15%くらいから徐々に配合を増やしていくなど、時間をかけて浸透させていく必要があると話す。

「でも、医療分野では、もう既に米粉を使ったパンは取り入れられています。あらゆる人においしいパンを食べる喜びを届ける、それが私の願いです。そのために、これからも米粉を使ったパンづくりに力を注いでいきたいと思います」

食べる喜びを広げる、可能性に満ちた米粉

右:表面に米粉を塗り、パリッとした食感に仕上げた米粉15%のパン
左:完全グルテンフリーの米粉100%



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